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提言

雑感提言

ITC副所長:中野 誠彦


世界規模の感染症が蔓延したことにより大学のあり方が問われた。大学にはキャンパスがあり、授業に出席するということは大学に来ることを意味し、研究活動をするというのは研究室に来るということが基本だった。ところが、それが自由にできない状況が現在も継続しており、ネットワークを活用し物理的人的接触を伴わないような活動形態が活用されている。この件については、大きな変化を伴ったことにより、良いこともみつかるとともに、課題も多く発生した。そのことについて考えてみようと思う。

良いことの一つはオンデマンド教材が整備されてきているということである。このことは、教える側教わる側双方にとってメリットのあるものと思う。特に学生からすれば、動画視聴の時間帯に自由度が生まれた。時間帯のみならず、視聴速度や視聴回数などにも自由度が生まれ、また視聴者にとって座席の位置によらず視聴でできることは大きなメリットだと思われる。教える側からすれば、教材の再利用性を含めて考えれば将来的なメリットが生まれるだろう。現実には教材作成には通常の講義時間の数倍は要することになるため、その係数をうわまわらなければ損益分岐点を超えないわけだが、アーカイブなどとして活用していけば、いずれ達成できるように思う。

一方、非同期の講義においては、学生の反応をみたりフィードバックを与えにくいという側面がある。これについては、掲示板やチャットツールなどが活用されると良いと思うが、長時間スケールにおける同期もとれていないため、簡単には活性化が難しいと考えられる。

オンライン活用授業における、大きな課題は評価のための試験実施方法にある。同じ時間、同じ教室で実施できれば、旧来と変わらないわけであるが、配慮を要する学生が受講していた場合、何かしらの措置が必要になる。これは極めて大きなコストになるため、一見旧来と同じコストに思われる試験は、現実のオペレーションを考えれば、かなり割増コストを見込む必要がある。したがって今後は有効なオンライン試験の実施というのが強く求められる。この点を克服できたとき大学というのは大きく変革できるのではないかとさえ思える。

演習や試験問題の形態についても受講生の数によって最適な形態は異なる。受講生が多い場合は、自動採点を必須とし、少人数の場合は作問コストの低い、レポート課題なども有効である。今後は自動採点を活用した演習問題作成のノウハウの共有が重要と思う。

実は、ここ数年における状況で最大の課題はコミュニケーションにあると思う。物理的に時間と場所を共有することは自ずと相互作用が生じ、同時に情報交換を伴う。ところがそれが制限されると、その両者が消滅してしいます。このことは直接目に見えるの作用としては感じにくい側面もあるが、現実には大きな影響を与えていると感じている。リアルな会話が制限されたことにより、何かを伝えたり、受け取ったりすることが極めて困難になってしまった。テキストやデジタル情報でも同期非同期通信が可能なのだから問題ないと感じる方も多いと思うが、それはすでにコミュニケーションチャネルが十分に形成されている場合においてであり、チャネル未形成段階においては極めてコミュニケーション困難な状況にある。

大学は学生、教職員ともに現代の状況にあわせたコミュニケーション手段を持つこと、またITCとしてはそのインフラの提供が必須かつ急務であると感じている。学生に何かを伝えようとしても、活用価値の低い自宅住所と電話番号の登録ではなく、必須ツールにからめたコミュニケーション手段を持つべきと考える。例えば、科目を履修した学生はCANVASなどを利用するわけだが、その利用の前提には、必要なメッセージやドキュメントを閲覧しないと先の操作を制限するといったものがある。今現在、そのような通信手段がないために、過剰とも言えるコストをかけて、あらゆるチャネルを試行錯誤しながらチャネル形成を一方的に行っているのが実情である。自分も職員のかたから繰り返しお電話を頂いたり、メールを受け取ったりするのだが大変恐縮してしまう。キャンパス不在時に居室の電話にかけて頂いても残念ながら受信ができない。携帯電話やスマートフォンが普及している時代なのだから、転送や、そちらに連絡をいただくことはできないのだろうか。番号を共有しなくても、システムで、音声通話が可能なツールを共有していれば問題が解消するのではないかと思うのだが、旧来のツールに頼ると不要なコストを誘発しているように思えてならない。可能なコスト削減をすることにより、学生、教員、職員の皆に余裕を作り、新しい取り組みにそのエネルギーを向けることが、今後の大学の発展につながると信じている。

最終更新日: 2022年9月22日

内容はここまでです。